FTT、出会いの日

ウインディア作
僕がインターネットを始めたのは今から一年と半年程前の事。

その年の八月。

夏の暑い日に、僕はあるサイトに戻って来た。

─此処にはもう来ない─

そう決めた所だったのに。
チャットを覗いて見た。
かつて、その場所で自分に語りかけてくれた方々の笑顔がふとディスプレイに垣間
見えた気がした。

─変わってる─

予想していた事だったが、悲しかった。
知っている方は一人も居なかった。

夏休みというだけあって多くの初心者と見える方達が初めて会う者同士で楽しそう
に会話をしていた。
そんな中、過去をぼんやりと思い出しながら一人、僕はディスプレイを眺めてい
た。

─今から数ヶ月くらい前にはね…─

─凄い人が居たんですよ─

─また会ってみたいなぁ…─

如何見ても初心者にしか見えない癖に古参を気取る者。

煙たがられても仕方が無い。

それが当時の僕だった。

とある日、そのチャットで

僕は二人の初心者と思しき方達に一際目を惹かれた。何故かは分らない。

一人はピカチュウと名乗っていた。

社交的で、人と喋るのが好きそうだった。何でもすぐに不思議がり、ある種の徹底し
た面を持っていたようだった。

─ポケモンのHN…─

─ガキだな─

心の片隅に最低な自分が居た。

もう一人はギィと名乗っていた。

─ったく付き合ってられねーよ…─

そう思いつつも、何故か親しくなっていった。

人を馬鹿にする自分が居た事を此処に深く悔やむ。

ある日、そのピカチュウとかいう人が荒らしに積極的に語りかけているのを見かけ
た。

─何なんだコイツ…─

─荒らしは無視すりゃ良いのに…─

そう言う自分の裏側では、歓喜の声があがっていた。

『今時、こんなに優しい奴もいるのか…』

それは世の中を軽視していた自分の本音なのかも知れない。

ギィと名乗る者も、確かによく気が合う者に変わりなかった。

それから数日で僕は二人を見かけるとチャットが数倍楽しくなる様な気がする様に
なっていた─。

そんなある日。

チャットに、妙な男が現れた。

─何だ?コイツ…─

明らかにオーラが違かった。言葉一つ見るたびに心臓の鼓動が早くなる、そんな男だ
った。

そいつは心落ち着かせる碧の色に、漢字二文字で『臥龍』と名乗っていた。

様子を見るに、その男はそのサイトではかなり、尊敬されている者の様だった。
かつてそのサイトに『伏龍』と名乗る者が居た、という事はおぼろげな記憶にあっ
たのだがその男と関係があるのかは分らなかった。

─何時の世代にもこんな奴は居るんだな…─

愚かなる自分は、その臥龍という男を単なる仕切り屋としか見ていなかった。

─こんな男が尊敬されるとは此処も落ちぶれたものよ─

─かつて此処に居たあの方々に会いt

『確か此処では初めましてですよね?宜しくお願いします』

その男は、臥龍は、最低の自分にそう言った。

何故、あの時の愚かなる自分に其処まで丁寧な挨拶をしたのだろう─

驚きはまだ続いた─

─この様な男、所詮上辺だけよ─

─気にするな…オレ!─

『尚、軍団等の結成は最重要情報室によって裁かれます。』



『これは決まりです^^一日一回しましょう。』



『では、御望み通り五強さん達に報告と行きましょうか、』

???

─違…─

かつて『英雄』と呼ばれて居た方々とは人種が違うかの如く。
言葉と言う名の矛でもあり盾でもある物を背負っていた。
そう、それは強すぎても矛盾する物。

そんな男に当時の僕が敵う筈も無い。
驚嘆の連続を隠す事が精一杯だった。

その時、彼は絶頂に居たのだろう。
少なくとも、自分が其処を訪れる前の事は分らないが、自分の目にはそう見えた。

恐らく特定の掲示板にしか行かない方々以外には。
全てその名を知らしめて尊敬を集めていた。

勿論、中には集団意識の賜物もあったのだろう。

─皆がこの人を尊んでいるから、とりあえず流れに合わせる─

馬鹿げてる。もしその人間と考えも気も真も合わないのだったらそいつとは別の道
を歩めば良い。

と、当時はそう思っていた。

─こいつ等全員、何を思ってそんな態々…─

─機嫌取りはいい加減にしろや…─

最低な自分は尚もぼやいていた。
そして、心の中でまた歓喜の声が上がった。

『…こいつは若しかしたら長い間オレの求めていた…本気で語り合える者か…?』

こうして、僕はピカさん、ギィさん、臥龍と出会った。

その当時の僕は、この3人がいかに自分に影響をもたらすか、考えもしなかっただろ
う。

だが自分に影響をもたらした方として、そしてこの頃出会った方として忘れては為
らない方がもう一人居る。

魁様だ。

─プロローグ終わり

【魁、と言う名の者】

色々な方々に会い、色々なショックを受けた僕は、すっかりそのサイトがお気に入り
に為った。

そして少なからず反省をした。

─此処はオレが思っているより、面白そうだな…─

掲示板をざっと眺めただけでも感心する事は沢山あった。

元より僕は世の中を軽視している、という事は前に書いた。

─所詮ガキの集まるサイトに碌な者は居ない─

最低だ。そんな事を一瞬でも考えていたなんて。

在り難い事に、そんな考えはすぐに一掃された。

─今時の者も中々、面白い事を考えているのか─

自分もまだ『ガキ』と呼ばれる世代なのに…

自惚れを捨てさせるには丁度良かった。

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『お師匠様』

ん?

『魁、』

は?

とある日、僕は『師弟関係』という者に遭遇した。

師も弟子も、ポケモンについて鑑定する"鑑定士"の様だった。

因みにその『師』とは─

『臥龍!?』

『…さん…?』

あの男だった。
弟子は『魁』と名乗っていた。

僕は何れHNの名付け親となる方に、その時初めて出会うのだった─

鑑定士】

このサイトには『鑑定士』と呼ばれる者が大勢居る様だ。あの臥龍という男もその
一人の様だった。
その弟子の魁という者も同じく。

─中々奥が深いんだねぇ…─

鑑定というのは呼んで字の如くトコトン、ポケモンを鑑定していた。
それは読んでいてはっとする程、奥の深いものから簡素で分りやすく、すぐにうなず
ける様なものまで様々だった。

─こりゃぁ…上手い人はかなり尊敬されるだろうなぁ…─

案の定、臥龍は鑑定士の中でも一、二を争う腕っこきの様だった。
彼は皆に慕われている分、多くの要人とも会っていたが自分の目にはどうも彼が退
屈している様に見えた。

─無理も無いな─

─皆が皆、同じ様な言葉を繰り返して…。世辞を言われても詰まらないだろうに─

勿論、彼は名実共に優れている。
これは疑い様がない。今も昔も同じく。

それを褒め称える為に数多くの言葉が噴水の様に彼に降りかかっていたが、はっき
り言ってそんな言葉を幾ら浴びても彼が本当に満足したと見える様な時は無かっ
た。

彼が今、モノやかぐたんと喋っている時非常に活き活きと見える(読める)のは、二人
が決まり切っていない、不定形な喜びを与えてくれるからなのかも知れない。

だが、

自分にとっては羨ましい限り、その当時は憧れの象徴に見えた。

その頃から僕は彼を尊敬する様になった様だ。

次回では、その数多くの方々の中から、自分が特に気を惹かれた方。特に親しい(と思
っている)方、そして魁様との出会いを紹介したい。
鑑定士】

このサイトには『鑑定士』と呼ばれる者が大勢居る様だ。あの臥龍という男もその
一人の様だった。
その弟子の魁という者も同じく。

─中々奥が深いんだねぇ…─

鑑定というのは呼んで字の如くトコトン、ポケモンを鑑定していた。
それは読んでいてはっとする程、奥の深いものから簡素で分りやすく、すぐにうなず
ける様なものまで様々だった。

─こりゃぁ…上手い人はかなり尊敬されるだろうなぁ…─

案の定、臥龍は鑑定士の中でも一、二を争う腕っこきの様だった。
彼は皆に慕われている分、多くの要人とも会っていたが自分の目にはどうも彼が退
屈している様に見えた。

─無理も無いな─

─皆が皆、同じ様な言葉を繰り返して…。世辞を言われても詰まらないだろうに─

勿論、彼は名実共に優れている。
これは疑い様がない。今も昔も同じく。

それを褒め称える為に数多くの言葉が噴水の様に彼に降りかかっていたが、はっき
り言ってそんな言葉を幾ら浴びても彼が本当に満足したと見える様な時は無かっ
た。

彼が今、モノやかぐたんと喋っている時非常に活き活きと見える(読める)のは、二人
が決まり切っていない、不定形な喜びを与えてくれるからなのかも知れない。

だが、

自分にとっては羨ましい限り、その当時は憧れの象徴に見えた。

その頃から僕は彼を尊敬する様になった様だ。

次回では、その数多くの方々の中から、自分が特に気を惹かれた方。特に親しい(と思
っている)方、そして魁様との出会いを紹介したい。

【HN名付け親】

人の印象には名前というのも判断材料になるのかも知れない。

僕の場合はそう、名前で大体印象が決まる。

無論、文字が絶大な威力を誇る時には尚更。

自分のHNには納得した物を付けたい─

とその当時の自分が思っていたかは分らないが、

とりあえず人に良い印象を持たれるHNを作ろうとしていた様だ。

面倒臭がり屋の僕は、PCの前の定位置から見える範囲での単語を組み合わせてH
Nを作ろうしていた。

─んー、、、─

他の単語をアレンジした感じが良かった。

─まともなのが無ぇなぁ…─

本のタイトルやカレンダーに書いてある祝日等の漢字。

─ダメだ。。。─

諦めた。

チャットでぼやいている事にした。

─良いHNは無いかな…─

その時、

魁様が相談に乗ってくれた事は覚えている。

だがその経緯は残念ながら忘却の彼方。

延々と喋っていく内、魁様がこんな事を言ったのは覚えている。

『…じゃぁ少しアレンジして"ウィンディア"とか』

その瞬間、僕は求めていた物に辿り着いた。

今日、初対面の人間にこの片仮名の文字がどんな印象を与えるかは分らない。

だが、このHNはこれからも大切にして行きたい。

そう思っている。

【呼び捨て】

納得出来るHNを持った事によって調子に乗った僕は、その日も意気揚々とチャッ
トにやってきた。

普段と変わらぬ雑談が繰り返されている中、ふと如何滑ったか、呼び捨ての話題に為
った。

─ウィンと呼んで下さいね─

思い出してみれば、子供じみた事を言った物だと思う。

それに興じて何人かの方は呼び捨てで呼んでも良い、と言い始めた。

結局話は繋がって、僕と鑑定士の覇者、そして臥龍は呼び捨ての仲に為る事になっ
た。

─御望み通り呼んでやろうw>ウィン─

─じゃぁ呼びますよ>臥龍─

─別に良いですよ?非礼は無視しますがw─

呼び捨ては、敬語を超えた親しみの証。

そう思っていた僕にとっては嬉しい事だった。

覇者という方は相当腕の立つ鑑定士の様だった。

─黒文字…─

地味と言うより強烈な印象。

黒は他の全ての色を圧倒する。

他の全ての色を制する心算だったのだろうか、何て事は考えてなかったが少し

─うーむ─

とした。

【覇者という人】

─うーむ、、、─

また、あの男が居た。

─覇者、か─

正直、天下人の付き添い人みたいに見えたのが第一印象だ。

当時雲泥の差があった彼等と僕では、語り合える機会が少ないのが現状だった。

つまり、覇者という人がどういう人なのかは分らなかった。

呼び捨ての許しを得たからといって決して対等ではなく、彼等の方が目上の立場に
ある事は明らかだった。

普通、幾ら呼び捨てで呼んでも良いですよ、と言われても初心者がいきなり

『よぉ、覇者!』

等と言ったら絶対にそれからは無視されるだろう。

礼に厚く、人の心を読めてこそ雲の上の憧れに思わせたのだから当然。

此方が守れない礼は向こうも守らない─

そんな事態に為っただろう。

なので僕は極力控えめに接する事にした。

その人物へだけ言いたい事がある時のみ、

『〜>覇者』

と打った。

彼等は、というか彼はその様な事は気にしていないのだろう。

"ウィン"という呼び名を積極的に使っていた。

酔った宴会でのノリ合わせの様な約束を信じ、親しみを込めた『呼び捨て』で扱っ
てくた覇者。

正直、嬉しかった。

それまで彼に持っていた天下人の付添い人等と言うイメージは捨て、

僕は彼の事を『温かみのある男』と心の片隅で思い始めていた…

【多くの出会い】

その後も、僕は多くの【鑑定士】に会った。

大抵の鑑定士は、改行もしないでズラズラと文を繋げていて、

『見難いなぁ』

とよく思ったものだった。

文字を羅列したものを見ると如何にも幼稚さを感じる。

逆に整った、改行された文章には知性を感じる。

『ほとんどの鑑定士は鑑定くらいしか能が無いのだろうか』

本気でそんな事を思ったりもしていた。

後に、僕はONEMANという方に出会う事に為る。

出会いの経緯は覚えていない。

恐らく、ごく普通に。冷たい空気が下に下がるみたいにして出会ったのだろう。

彼は鑑定士では無かったのだが、鑑定士以上に『よく見ている』風に感じれた。

─並じゃ此処まで来れないだろうなぁ、、、─

類稀な、という意味では無い。

だが同じレベルの中で最高の者になる質。

それを備えていた。

【FTT。原型。】

GTという人が居た。

悠長な喋り口で、顔文字を使いながらヒョイヒョイと喋っている、そんな人だった。

いきなり現れていきなり喋りだせていきなり笑わせてくれるのは彼ぐらいだろう。

そんな彼が、何処で出会ったのかピカチュウさんと意気投合し、非常に仲が良くなっ
て居る様だった。

─これは…

─ネット恋愛という奴か

その手のモノには以前も遭遇した事がある。

幼稚な会話だったが、どうも理性を超えた感覚に来るものがあった。

今回は─

いきなり知らされたので、何がなんだか解らなかったが

とりあえず、そのGTという人が運営しているサイトに行ってみる事にした。

─ふーん、、、

─シンプルだなぁ

白基調の、悪い言い方を言えばスカスカした感じのサイトだった事を覚えてる。

掲示板を覗いて見ると

─何じゃ!?このアイコンは…

人間を象った物だった。

あるモノは華麗な衣装に身を包み、あるモノは甲冑の様な者を纏ってい
た。

人の形をしたアイコンはあまり好きでは無い。

アイコンというのは象徴であるべきであってそのモノを現すのはディープ過ぎると
思う。

それに、若干スカスカしたサイトでアイコンが中々『深い』モノなのはちょっと合
わないのでは、と思った。

そんな印象を持ちながら、とうとう僕は、チャットに足を踏み入れた。

後に怒りに身を任せる事も知らずに。

【込みあがった思い】

其処には、あの二人が居た。

ピカチュウ、GT。

お互いの思いが通じ合っている状態だった様で、浮かれていた。

名前も顔も知らない状態で─

このガキは─

人の事を愛せると言うのか、、、─

ホワホワとした、二人の人間が居る中で僕は急速に湧き上がる怒りを感じていた。

下らない、馬鹿馬鹿しい等と言った言葉を使って嘲ても足りない程の怒り。

何故生じたかは良く分らない。

私的考察か、不道徳だと言いたかったのか、はたまた嫉妬か。

『 甘 っ た れ る な ! ネ ッ ト や め ろ や ! こ の 初 心 者 が ! 』

【弟子】

状況は一変した。

凍り付いた様に恐れ戦くピカチュウ。

何が起こったのか分らない様なGT。

ディスプレイを信じられない、と見つめて居るのだろう。。。

人の本性を見た事が無かったかの様に、

若しくは外の世界を知らなかった蟻の子の様に。

ディスプレイを見つめながら大粒の涙をその夜流したというピカチュウ。

そんな事も知らずに─

僕は彼女に言い捨てた。

─生半可な気持ちでインターネットをするな!

僕なら目を背けたくなる様な言葉。言葉。言葉。。。

人に向けるべきでは無く、ゴミ箱に棄てるべき言葉。

正義を振り翳した心算で、

その陰に隠れて妬み嫉みをぶつける心算で、

挙句、インターネットをやめろ、と。

生半可な気持ちで居た人間、いやほとんどの人間は感情を害され僕の前から去るだ
ろう。

ピカチュウは、僕の前を去らない人だった。

次の日から二度と話は無理だと思っていても、

女性を泣かしてしまって、自分からネットを止めようと思っていても、

つい立寄ってしまうあの場所には何時も居る彼女…


それからしばらくして─

ピカチュウとGTは『結婚』した。

勿論それは実際の結婚では無い、

『ネット恋愛』という奴だ。

GTさんはピカチュウさんという宝物をあの夜得た。

あの夜、僕に得る物は何も無いと思った。

しかし、僕には得る物があった。

それは『弟子』。

人を追い払うであろう言葉が、ピカチュウさんには良き説教として聞こえた。

あの夜、ピカチュウさんはGTさんの妻として、

そして僕の弟子として新たなる道を踏み出したのだ。

思い起こせば、

あの日から、時計の螺子がどう狂ったのか、

駆け抜ける様に月日が過ぎて行った気がする。

一体あの短い時間で、

如何やってあれだけ多くの思い出を作れたのかは分らないが、

とりあえず僕の初心者時代はそうして終わった。

夏は去り、生あるモノは皆、

待ち受ける厳しい時期へと目を向け、

坂を転がる様に時を歩んで行く。。。

【師弟】

月日は流れ…

舞い散る葉が紅に染まる頃。

僕がそのサイトに通い始めて数ヶ月が過ぎた。

チャットに蔓延っていた他の、いわゆる『愚者』達は姿を見せなくなり、

夏休み前の静かな状態に戻りつつあった。

その頃僕は、問答と心理探査の様な会話の末、

臥龍の弟子となった。

真理を見出し、迷える者にそれを与える『鑑定士』になる為に。

だが実の所、それは真の理由では無かった。

─この人と多くの体験をすれば、今よりより良い状態になる事が出来るやも─

鑑定の域を超えた知識を生で学ぶ為に弟子となる事を決意した。

というのがその当時の考えに一番近いだろう。

それと、ナメク丸という者が弟子に入ってくれた事がその頃の大きな事件だ。

僕は臥龍に、(表向きでは)鑑定の業を学ぶ為に弟子入りし、

そのナメク丸という者はその頃僕が掲示板で書いていた"小説"の業を磨く為、と

弟子入りした。

以前、彼がそのチャットで僕の事を師匠呼びしていたとき

ある方が『ナメク丸さんは何の弟子なんですか?』

と訪ねた。

その時彼がこう答えたの事をよく覚えている。

『小説と師匠の"人徳"の弟子です』

人に尊敬される様になった事が素直に嬉しかった。

臥龍なぞ、何故あんなに尊ばれているのに嬉しさをあまり見せないのだろうか、

とよく疑問に思った。

今となってはその疑問にも答えが出ているが、

何はともあれ、その頃は舞い上がらんばかりの嬉しさだった。

【"社会見学"】

一時期うつつを抜かしていた"小説"も執筆を止め、

僕はだんだん、そのサイトよりGTの運営しているサイトの方によく通うように為
って行った。

同じ様な事が続く毎日に嫌気が差し、

新しい刺激を求めて其処に通った、のだが

実をいうと大した刺激は無かった。

よく通うようになった初期の頃は、『住人』と呼ばれる常連さんのシステムに興味
をそそられ、『ほぉ』と思ったりもしたが、

慣れるに従ってまた、退屈な日々は戻って来た…

これ以上退屈な日々を過ごすのは御免、

そう思い、僕は下らぬ理由を付けて

『見学』というか『旅行』というかそんな様なものを企画したのだった、、、

下らぬ計画に人が集まるのか不安を抱きつつも、

当時親しかった二人の者にそれを話して見たところ、

意外にも良い反応が得られ、日時も決まり

当日が楽しみ楽しみ、と思いつつ、

内密にしたかったのでそれらの発言(ログ)が消えるまで会話を続けた。

因みにその計画の参加者というのは、毎度お馴染みの臥龍と

以前話したONEMAN、彼らだ。



さて、当日は定時に待ち合わせ場所で会え、

スムーズに目的地にも向かえ、

お目当ての、"ネットの世界の生の事情"を見る事も出来た、と思いますか?



実際はそんなに甘くは無かった。

待ち合わせ時刻をオーバーし、やっとの事で目的地のチャットに向かい、

複雑に分かれた部屋で迷子になり、

ROMやAFKが重なり

結局僕達は何の為に来たのだ?と。

三人揃っても、何をすれば"実情"なんてものが分るのか、と。

周りに居る見ず知らずな者達は雑談を続け、

アイコンを動かしつつ喋れる『部屋』の中で途方に暮れた様に、

時が過ぎるのを見守るしか無い僕達の中で、

言いだしっぺ、ウィンディアは計画の甘さを思い知らされたのでした。

臥龍が、雑談の途中に

『第一、この計画自体が無意味』

と厳しい言葉を使ったのは甘さ、を思い知らせる為にあえて参加した故の

言葉だったのだろう、と今では思っている。

あんなしょうも無い計画に参加してくれた御二人は、今では僕の大切な友人である。






















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